浅田 剛治 氏
(あさだ たけはる)
1969年、大阪府生まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、(株)リクルートに入社、人材開発部に配属。リクルートを退職後、家業である名古屋の結婚式場の経営を任され、3年で赤字だった業績をV字回復させる。2000年、ノバレーゼの前身となる(株)ワーカホリックを起業。ドレスショップの経営と婚礼プロデュースから事業をスタート。2003年、名古屋市郊外に開業した「アマンダンテラス」が大ブレイク。その後も東名阪を中心に多店舗展開を継続し、2006年10月、東証マザーズに新規上場。2010年12月、東証一部上場に昇格。
全てのお客様の「最大多数、最大幸福」を
目指し、実現するのが私たちの仕事です。


ノバレーゼは、独自の創造性を活かしたウエディング会場、ドレスショップを展開する総合ブライダル企業。「心に残るブライダル」が実現できるとして、その知名度は高い。「私がブライダル業界に入った17年前、多くのお客様が求めるウエディング会場は『利便性がよくて有名なホテルや結婚式場』でした。
しかし、現在のお客様の嗜好は、利便性や知名度よりも『すてきな空間で、心に残るウエディング』に変わりました」と、代表取締役社長の浅田剛治氏。こうした意識の変化によって、有名ホテルや結婚式場という「形」よりも「中身」を求め、ハウスウエディングやレストランウエディングなど、小規模でも嗜好にあった会場を選ぶ人が増えた。これは選ぶ側にとっては喜ばしいことだが、一方で、少ない投資で新しいビジネス展開を思案したブライダル会社も乱立。ブライダルの低価格競争を招くことになる。
消費者心理として婚礼費用が安くなると、そのときはうれしい気がする。しかし実際は「サービスの質が低い」「料理がいまひとつ」など中身が乏しいことが多く、招待客の不評を買い結局は新郎・新婦やご両親が恥をかくことになる。
「ブライダル会社の本来の役割は、披露宴でいうなら会場に集まった老若男女すべてのお客様が満足される宴を目指すこと。それがプロの仕事であり、短期的な利益を求めた低価格の披露宴の数をこなすことではありません」。

一般的に披露宴には、新郎・新婦の友人、ご両親、親戚、兄弟姉妹などが集まる。性別、年代も違う人たちが「披露宴会場」という空間、時間を共有するなかで、浅田氏の言う「すべてのお客様が満足できる披露宴」とはどんなものなのだろうか。
「披露宴とは、会場にいるお客様すべてが満足する、『最大多数、最大幸福』であるべきだと思っています。簡単にいうとおいしい料理といい音楽、スタッフの上等の笑顔のサービスというシンプルさの中に『心に残る演出』があり、終わったときに会場にいるすべてのお客様が『よかった』と感じてくださる披露宴です。これを実現するためには、最初に新郎・新婦がご相談されたときのご希望に沿えないこともあります」。
披露宴において新郎・新婦の希望をかなえることは大切なことではあるものの、全ての希望がOKなのかというとそうではないという。
「例えをあげて話しましょう。披露宴でよく、新郎・新婦の生い立ち映像が上映されます。そのBGMに『新郎(もしくは新婦)の好きな曲を使ってほしい』と希望されることがあります。しかし、それがラップ調の曲だったら、年配のご親戚の方々にとっては耳慣れない曲です。そんなときは、どんな年代の人が聞いても心に残る曲に替えていただくようにご説明し、実際にこちらで選んだBGMを流したサンプルビデオをお見せして、納得していただくこともあります」。
また『これなら絶対にお客様が喜ばれる』という演出は、進んで提案することもある。たとえば金沢にあるノバレーゼの会場では打ち上げ花火ができ、披露宴で大輪の花火を至近距離でご覧になったお客様の感動は大きく、一押しの演出としておすすめするそうだ。
「プランナーは、とかく新郎・新婦の希望を叶えることをゴールにしがちですが、ゴールは会場のお客様全てに満足していただくこと。そうしなければ、最大多数、最大幸福の披露宴は実現できないと思っています」。
新郎・新婦が『こうしたい!』と希望されることに対するプランナーの提案が、真逆であるほど、納得を得るのは容易ではないだろう。打ち上げ花火のようにコストのかかる演出も躊躇しがちだ。しかし、プランナーの「この演出は絶対にお客様に感動していただける」という自信がお客様の信頼を得て、心を動かすことになる。そしてこの自信は、『この提案で披露宴が成功した』という成功体験を多く経験することで培われる。その積み重ねで『私がお手伝いしたら、誰よりも幸せになれる』というほどの想いを持って提案できるプランナーに成長する。

ノバレーゼでは、素質的にブライダル業界に向く人材を確保するために、新卒採用を積極的に行い、浅田氏独自の「ポテンシャル採用」を用いている。
「常にお客様視点で、『自分ならこうしてほしい』とフラットに物事が見られる素質を持った人を求めています。
そもそもホスピタリティマインドについても、私は社内教育で身につけさせようとは思っていません。それこそDNAにホスピタリティマインドが組み込まれているような人は、常に『どうすればお客様が幸せになれるのか』を、考えられるからです」。
こうした人材を発掘するために、1次面接を通過後、就職希望者と面接者がときには食事をしながらざっくばらんに過去の人生について話す「面談」が行われる。
「面接という形をとらないほうが、その人が潜在的にホスピタリティを持ち合わせているかどうかがわかります。それは『学園祭のイベントを主催して皆に喜ばれて感動した』というようなものではなく、その人の人生の話の中にいくつもキーワードが落ちていて、それは必ず一本筋が通っています。これは面談を繰り返すうちにわかってきます」。
そうして採用された人材は、入社直後の「導入研修」、入社1年目の「振り返り研修」、先々にはマネージャー研修などステージごとの教育研修を実施しながら、現場ではあまり制約をせず本人のポテンシャルを活かすことを最優先にする。
ブライダル業界を目指している人の中には、将来夢を叶えて業界で働く人、別の業界で働く人とさまざまだと思います。ブライダル業界に進んでも別の業界に進んでも「あの学校で学んだ学生は間違いない」といわれるような価値あるものを学び、業界で必要なスキルを身につけてほしいと思います。